本年度は巣状糸球体硬化病変の形成におけるミトコンドリアDNA障害の有無とミトコンドリア機能障害の観点から以下の3点を中心に検討した. 1)巣状糸球体硬化病変を伴う他の糸球体腎炎での検討 前年度に引き続き、巣状糸球体硬化症様病変を伴うものと伴わない、糸球体腎炎腎生検組織検体からDNAを抽出し、老化、虚血等の酸化的ストレスにより後天的に増加することが指摘されているミトコンドリアDNAの4977bpの欠失(いわゆるcommon deletion)の有無と遺伝子変異率を、PCR-RFLP、real time PCR法により検討した。その結果IgA腎症に加え、膜性腎症腎生検組織において高率に欠失突然変異を伴うことが明らかとなった。 2)膜性腎症腎組織におけるmtDNAの酸化障害 腎生検凍結切片において、螢光標識ミトコンドリアDNAプローブを用いたin situ hybridization(FISH)法により、ミトコンドリアDNAを検出し、さらに同一切片においてDNAの酸化障害マーカーとされる80HdGのモノクローナル抗体による同時染色を行い、膜性腎症患者では糸球体上皮細胞レベルでのDNA酸化障害の集積を認めた. 3)巣状糸球体硬化症動物モデルによる検討 ミトコンドリアDNA欠失ともった培養ヒト線維芽細胞ならびにラットの巣状糸球体硬化症モデルにおいて腎糸球体内でのヘテロプラスミーの証明ならびに定量解析をFISH法により行った.またミトコンドリア外膜蛋白である抗porinモノクローナル抗体(IgG2b)、抗COX Iモノクローナル抗体(IgG2a)、抗COX IVモノクローナル抗体(IgG2a)と異なる色素で標識した各サブクラス特異的抗体を用いて、同様にヒト線維芽細胞ならびにFawn Hooded Hypertensive ratの腎組織において、免疫組織学的な検討を行い、ミトコンドリア内の蛋白発現の差異を検討した.
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