研究課題/領域番号 |
13671098
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石坂 信和 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20270879)
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研究分担者 |
森 一郎 和歌山県立医科大学, 附属病院, 助教授 (10157852)
大野 実 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00185349)
塚本 和久 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20251233)
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キーワード | アンジオテンシンII / 蛋白尿 / 腎障害 / 心線維化 / 酸化ストレス / 鉄代謝 / 鉄負荷 |
研究概要 |
われわれは以前アンジオテンシンIIの持続投与が、腎尿細管でのヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の発現を亢進すること、HO-1の高発現している、尿細管では鉄の沈着を認めることを報告した。アンジオテンシンII投与ラットへ鉄のキレーターであるデフェロキサミンを投与したところ、尿細管での鉄の沈着は抑制され、アンジオテンシンIIによる尿蛋白増加は抑制された。アンジオテンシンII生体酸化ストレスを増加させることは、血中イソプロスタン濃度上昇にても示されているが、デフェロキサミンはイソプロスタン濃度を減少させ、生体酸化ストレス減弱に働くことも確認された。このことからアンジオテンシンIIによる腎機能障害には鉄代謝異常とそれに引き続く酸化ストレスの増大が関与していることが示唆された。われわれはさらに、鉄デキストラン投与による鉄負荷モデルを作成し、アンジオテンシンIIによる腎障害をmimicするかどうかについて検討した。予想に反し、鉄負荷は腎でのフェリチン発現を増加させるにもかかわらず、アンジオテンシンIIで認められる蛋白尿増加作用を有しなかった。組織学的には、鉄負荷は、腎髄質、糸球体に鉄沈着を誘導していたが、これはアンジオテンシンIIによる鉄沈着のパターン、すなわち尿細管への鉄沈着とは異なっていた。これより、蛋白尿には近位尿細管への鉄沈着が重要な働きをすることが示唆された。 この他、付随的に行った実験にて、アンジオテンシンII投与は心臓においても鉄沈着を誘導することを見出した。デフェロキサミン投与により、心でのフェリチン発現は抑制され、さらに、アンジオテンシンIIによって生じた心線維化も抑制された。このことから、鉄代謝異常は、アンジオテンシンIIによる腎障害のみならず心線維化の増悪因子にもなっていることが推察された。
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