ラットにおけるシスプラチン誘発急性腎不全発症に、活性酸素による近位尿細管細胞のアポトーシスが腎機能低下に強く関与することが知られている。しかし、活性酸素がどのような細胞内機序にてアポトーシスが発症するのかは不明である。アポトーシス誘導蛋白であるp53発現と活性酸素の関連を明らかにすることを目的とした。 シスプラチン5mg/kg体重をラットに静注5日後の血清クレアチニン濃度は0.7mg/dLであったが、活性酸素の一つであるhydroxyl radicalのscavengerであるdimethylthiourea(DMTU)500mg/kg体重のシスプラチン投与前の腹腔内投与とその後の125mg/kg体重の1日2回腹腔内投与の5日後の血清クレアチニン濃度は0.3mg/dLとシスプラチン誘発急性腎不全はDMTU投与により予防された。腎機能のみならず腎組織においても尿細管傷害は有意に抑制された。一方、アポトーシス誘導蛋白の一つであるp53の腎における発現について、シスプラチン投与後の経過をWestern blot法あるいは免疫染色法にて検討した。投与前の発現は認められなかったが、1日あるいは2日後にp53の発現がピークとなり、その後は減少した。hydroxyl radical scavengerであるDMTUの腹腔内投与にて、シスプラチン投与後のp53発現は有意に抑制された。 今後は、活性酸素がp53発現に関するどの因子に影響を与えているのを検討する予定としている。
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