研究概要 |
IgA腎症の発症に遺伝的要因が関与しているという報告が近年増加している。Gharaviらは、家族性IgA腎症においてQTL解析を施行し、IgA腎症発症の遺伝子座が第6染色体上にあることを報告した(Nature genetics,2000)。一方IgA腎症の動物モデルとしては従来より非純系のddYマウスが使用されているが、ddYマウスを高IgA血症を指標に20代選択交配し、純系化したのがHIGAマウスである。このマウスを用いて本症の腎病態と関連の深い高IgA血症及び多量体IgA更に腎沈着IgAの病因遺伝子座の同定をBALB/cマウスとの交配によるF2マウスを用いたQTL解析を試みた。 結果:HIGAマウスの病態形質関連遺伝子の推測される染色体上の位置は以下のとおりである。 1)高IgA血症に関しては、第2染色体のマイクロサテラトマーカーD2Mit63の近傍と、第4染色体のマーカーD4Mit33の近傍にLODスコアそれぞれ5.05、4.45と比較的高い数値を呈するlocusを確認した。 2)多量体/単量対比に関しては第12染色体のマーカーMit263の付近にLODスコア15.4のlocusをみとめた。 3)糸球体IgA沈着に関しては第15染色体のマーカーD5Mit42の近傍にLODスコア4.40のlocusをみとめた。 以上の内、high polymer/monomer ratioの位置はIg heavy chainの位置に一致しており、この部分が規定するアミノ酸配列を検討したところ、BALB/cと、HIGAで特にhinge部に配列の違いが認められ、この部がIgAの多量体を規定している遺伝子であることを疑い検討を進めている。 一方、高IgA血症、多量体IgA,腎IgA沈着に関与する遺伝子の位置同士に重なりはなく独立していた。
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