研究概要 |
本研究では,腎不全における骨の副甲状腺ホルモン(PTH)に対する抵抗性と無形成骨の発症機序の解明を目的として,臨床研究ならびに基礎研究を昨年度より継続して進めた. まず臨床では,副甲状腺摘除術直後のPTH濃度の低下速度を従来のアッセイと新しいアッセイで比較検討したところ,腎不全患者では,抑制性に働く7-84PTH濃度の低下が緩徐で,腎機能の低下が大きく関与していることがわかった.また,すでに腎不全患者で血中に蓄積していることと骨吸収と負の相関を呈することを示していたosteoprotegerin(OPG)に関しては,透析によって除去されないこと,さらに新しいビタミンD誘導体であるmaxacalcitriol治療によってかえって抑制されることを明らかにした. 一方,昨年度に腎不全にともなう低回転のモデルをすでに確立していたが,腎不全の程度と骨回転の抑制度が比例することから,何らかの尿毒物質が蓄積し、骨回転を低下させる可能性を考えた.すでに動物やヒトにおいて尿毒物質を吸着することが知られているAST120を経口投与したところ,抑制されていた骨回転の改善が確認された.さらに,AST120で血中濃度が低下する既知の尿毒物質はin vitroで骨芽細胞の増殖を抑制された.したがって,腎不全で蓄積する尿毒物質が,骨芽細胞に対する直接作用してその機能を抑制する可能生が示唆された. 以上のように,腎不全で骨回転を低下する機序を複数明らかにすることが出来た.これらは,実際の治療法の確立に大きく貢献すると思われる.
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