研究概要 |
我々は,急性尿細管壊死モデル(腎虚血再灌流傷害,シスプラチン誘発腎障害)を用いて,尿細管細胞死における酸化DNA損傷(8-oxoguanine(8-oxoG))の関与,および腎の防御機構について検討を行った。まず,腎虚血再灌流傷害モデルを作成し,HPLC法による腎の8-oxoG定量,8-oxoG免疫組織染色,およびPAS染色,TUNEL法による細胞死の判定を行った。8-oxoGの蓄積は再灌流1時間後に最も多く,主に髄質外層外帯の尿細管細胞の核および細胞質に認められた。そこで,8-oxoGの修復酵素である8-oxoguanine DNA glycosylase(OGG1)について,RNase protection assayおよびin situ hybridizationで虚血再灌流傷害時の発現変動をみた。正常腎におけるOGG1の発現は,主に髄質外層の近位尿細管,遠位尿細管に認められたが,再灌流3〜6時間後,近位尿細管における発現の著明な低下を認めた。細胞死については,近位尿細管細胞にnecrosis,遠位尿細管細胞にapoptosisを認めた。次に,シスプラチンによる尿細管細胞死における8-oxoGの関与について,in vivoおよびin vitroで実験を行った。8-oxoGを免疫組織染色で,尿細管細胞死をTUNEL法,cell viability法,flow cytometry法で検討した。シスプラチン投与により尿細管細胞に8-oxoGの著明な蓄積を認め,その後,尿細管細胞は細胞死(apoptosisおよびnecrosis)に陥ったが,。抗酸化剤dimethylthiourea投与により,8-oxoGの蓄積,尿細管細胞死ともに著明に減少した。以上より,急性尿細管壊死において,8-oxoG蓄積が細胞死に関与している可能性が考えられた。
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