腎組織の修復について 1.ハブ毒腎炎の作成 ハブ毒を静注し、メサンギウム融解後、メサンギウム細胞および基質の増生が21日目に最大となり、28日目にほぼ元の組織像に戻る可逆性のメサンギウム増殖性腎炎を惹起した。 2.細胞外基質の産生と分解の変化 ・コラーゲンIVとHSP47の発現 コラーゲンIVと、コラーゲン産生に必須のシャペロン分子であるHSP47(heat shock Protein 47)を免疫組織染色後に、コンピューターによる画像解析を行い、発現の程度を定量化した。コラーゲンIVとHSP47の発現は、メサンギウムの融解が起こる3日目において最小となり、21日目に最大となった。以後28日目には元のレベルに戻った。 ・コラーゲン分解系の変化 コラーゲンなどの細胞外基質は、マトリックスメタロプロテナーゼ(matrix metalloproteinase ; MMP)により分解されるが、今回は、分解する基質の種類が多いMMP-3とその転写因子であるEts-1の発現を検討した。コラーゲンIV、HSP47と同様の方法により、その発現を調べた。MMP-3とEts-1の発現はハブ毒投与後徐々に増加し、コラーゲンIV、HSP47の発現が最大になる21日目を過ぎても発現は持続した。 以上より、ハブ毒腎炎においては、細胞外マトリックスの増加する時期より同時に分解系の発現も増加しており、コラーゲン産生の低下と持続的な分解系の発現が組織の可逆性に関与していることが明らかとなった。 3.組織障害、修復における骨髄由来細胞の関与 骨髄由来の血管内皮細胞の関与を検討している。Tie-2遺伝子の下流にLacZの遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスの骨髄移植を行い、その発現を腎組織上で検出することが可能となった。今後種々の腎障害を惹起し、この細胞の発現を検討予定である。
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