実験腎炎におけるマトリックスの動態の解析 ・可逆性のメサンギウム増殖性腎炎であるハブ毒腎炎を作成:ハブ毒をラットに1回投与し、mesangiolysis後にメサンギウム細胞増殖とメサンギウム基質増生を生じ、正常に修復されるモデルを確立した。【結果】メサンギウム領域の拡大は最大約3倍であり、35日目に肉眼的にほぼ正常に戻った。 ・マトリックスの産生と分解に関係する因子の解析:マトリックス産生因子として、コラーゲン産生の際に必須とされているHSP47(heat shock protein47)とコラーゲンtypeIVを、分解系として、MMP-3(matrix metalloproteinase-3)とその転写因子であるEts-1の発現をした。【結果】コラーゲンIVの発現は21日目に最大6倍に、HSP47は14日目に7倍となり、それに対しマトリックス分解系のEts-1、MMP-3の発現は14日目より徐々に増加し、35日目では12倍となっていた。 【考察・今後の方向性】マトリックス産生系は14〜21日目、分解系は35日目が最大となっており、産生系と分解系のバランスが、マトリックスの動態に重要であることが示され、分解系の持続した発現が組織修復に重要であることが示唆された。このモデルにおいては、産生系の持続的刺激が加わっていないため、組織修復には、産生系の抑制と分解系の活性化を起こさせるような治療戦略が重要であることが示唆された。現在、アンジオテンシン系がコラーゲン産生や分解に重要な役割をしていることが報告されており、その詳細なメカニズムの解析をアンジオテンシンのレセプターノックアウトマウスを用いた実験による進めている。
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