実験腎炎における細胞外マトリックスと糸球体内皮細胞の動態 【背景】 (1)近年、血管新生の過程にアンジオテンシンIIが必要であることが明らかとなっている。 (2)レニン・アンジオテンシン系の概念は、アルドステロンまで広がり、心臓や血管局所におけるアルドステロン産生が報告されている。 今回我々は、アンジオテンシン阻害と糸球体修復過程における細胞外マトリックスと糸球体内皮細胞の動態を解析し、さらにヒト腎生検組織におけるアルドステロンの産生酵素であるCYP11B2の発現を検討した。 【方法と結果】 (1)アンジオテンシンII受容体欠損マウス(ARKO)にハブ毒腎炎を惹起し、マトリックスの変化を糸球体内皮細胞の動態に注目しながら検討した。その結果、ARKOでは野生型に比べ、糸球体係蹄の参復の遅れを伴いながらマトリックス拡大が残存した。さらにVEGF投与により糸球体係蹄の修復及びメサンギウム細胞増殖やマトリックス拡大が野生型と同様のレベルに復した。(2)CYP11B2 mRNAの発現をin situハイブリダイゼーション法により検討した結果、IgA腎症の糸球体と間質に、CYP11B2の発現が観察され、その発現の程度は組織障害度と正の相関を示した。 【考察】 拡大したマトリックス修復にアンジオテンシン・VEGF系を介した糸球体係蹄の修復が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。これは、糸球体血管の再構築が細胞外マトリックスの動態と関係があることを示しており、糸球体の修復に対して血管新生と細胞外マトリックスに注目した新しい治療戦略が今後検討されるべきと思われる。また、ヒト腎組織におけるアルドステロン産生の事実は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系へのパラダイムシフトが腎臓でも起こり、アルドステロン阻害が糸球体腎炎の有望な治療となりうる可能性が示された。
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