最近開発されたPC2マウスは、副甲状腺組織特異的にサイクリンD1癌遺伝子を発現し、原発性副甲状腺機能亢進症(PHP)を呈する。カルシウム(Ca)受容体作働薬であるKRN1493、および高リン(P)食のPHPに対する影響を検討した。本マウスは30週齢の時点でBrdUの取り込みの亢進、副甲状腺の腫大を呈した。36週齢より高Ca血症を呈し、PHPを発症した。Ca受容体作働薬であるKRN1493のPHPの抑制作用を検討するために、KRN1493の30mg/kg単回経口投与したところ、投与2時間後の血清PTH低下とそれに伴う血清Ca低下を認めた。高週齢PC2マウス(60〜80週齢)を用い、血清Ca値が12mg/dL以上の群とそれ以下の群に対するKRN1493の単回投与では、高Ca群ではKRN1493投与による血清Ca低下を認めなかった。副甲状腺のCaRの免疫染色では、高Ca群で発現低下を認め、これが薬剤への応答性低下の原因と推察された。 高Ca高P餌飼育により、食餌開始後47日からBUNの上昇を認めた。この時、PC2マウスはWTに比較して高Ca高P高PTH血症を呈していた。腎組織切片をKossa染色にて、PC2、WTマウス共にnephrocalcinosisを認めた。また、腎不全PC2マウスのみにアリザリンレッド染色で大動脈石灰化を認めた。大動脈中膜は肥厚し、Kossa染色でも中膜の石灰化を確認した。腎不全を呈したPC2、WTマウスの大動脈を用い、RT-PCR法で石灰化に関連する遺伝子発現を検討したところ、OSM、OPN、OC、ALPは両群共に発現を認めた。腎不全PC2マウスのみに動脈石灰化を認めた原因として、高Ca高P高PTH血症の関与が考えられた。また、動脈石灰化を来すマウスモデルは報告が少なく、本マウスは腎不全での動脈石灰化モデルとして有用と考えられた。
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