研究概要 |
平成13年度は,Epoの血管平滑筋細胞における作用を明らかにするために,EpoのMMPs産生及び活性化に対する影響について検討する予定であったが,結果はnegativeだった。従って,Epoの血管平滑筋細胞の増殖刺激作用に対するcAMP-protein kinase A系の影響を,Epoの情報伝達の各stepにおいて検討した。 結果はrHuEpo添加によりDNA合成は促進した。cAMP刺激薬のForskolinの前処置により,DNA合成は抑制されたが,cAMPのantagonistであるRp-cAMPによりその抑制は相殺された。 rHuEpo添加によりElk-1のリン酸化の亢進が時間依存性に認められ,そのpeakは5minであった。FKの前処置によりElk-1のリン酸化は抑制され,Rp-cAMPにより抑制は解除された。MEK, MAPKそれぞれのリン酸化もrHuEpoにより促進されるが,FKによるリン酸化の抑制を認めた。Protein kinase Cに依存するRaf-1-MEK-MAPKの活性化と,cAMPによる活性化抑制の関係を検討した。PKCのactivatorであるphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA)添加によりMAPKのリン酸化の増強が認められた。FKの前処置によりPMAによるMAPKのリン酸化は抑制された。 結論としてVSMCにおいてcAMPの上昇は,主にPKCによるRaf-1の活性化を阻害することで,rHuEpo誘導性のRaf-MEK-MAPK系の活性化を阻害する可能性が示唆された。cAMPを上昇させる抗血小板薬の,Epo誘発性血圧上昇の抑制効果の一部は,この機序による可能性がある。
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