ヒト有機アニオントランスポータ(hOAT)、ヒト有機カチオントランスポータ(hOCT)は腎での薬物の尿細管分泌において重要である。HOAT1、2、3、hOCT2は近位尿細管基底側に存在し薬物の尿細管内への取り込みに、hOAT4は上皮側に存在し薬物の再吸収、尿中排泄に関与していると考えられている。今回は、hOAT1、2、3、4、hOCT1、2の安定発現細胞を用いて以下の成果が得られた。 (1)薬物輸送の責任トランスポータの同定:(1)プロスタグランジンE_2、F_<2α>:hOAT1、2、3、4、hOCT1、2、(2)抗ウイルス薬アシクロビルおよびガンサイクロビル:hOAT1、hOCT1、(3)抗ウイルス薬ジドブジン:hOAT1、2、3、4、(4)抗腫瘍薬メトトレキセート:hOAT1、3、4、(5)テトラサイクリン:hOAT1、2、3、4、(6)カビ毒オクラトキシンA:hOAT1、3、4、(7)尿毒症毒素インドキシル硫酸:ラットOAT1、OAT3、(3)ではメトトレキセートと非ステロイド性抗炎症薬とのin vivoでの薬物相互作用の作用点がhOAT3であると予測された。 (2)臨床的に用いられている有機アニオン輸送阻害薬の評価:カルバペナム系抗生物質との合剤として用いられているベタミプロン、シラスタチンおよび尿酸排泄促進薬プロベネシドがin vivoで阻害するhOAT分子を予測した。すなわち、ベタミプロンはhOAT1、3、シラスタチンはhOAT1、プロベネシドはhOAT4である。 (3)OATの薬物性腎障害への関与の解明:hOAT1、3はオクラトキシンAによる腎障害に、ラットOAT1、OAT3はインドキシル硫酸による腎障害に関与することが明らかにされた。 以上の成果は、薬物輸送の分子機構が明らかにするのみならず、危険な薬物相互作用を回避したより有効で安全な薬物治療を行う上で有用な情報となる。
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