研究概要 |
本研究は、糸球体メサンギウム細胞高発現新規機能遺伝子"メグシン"の病態生理学的意義を解明し、我々が作製したメグシン高発現マウス(メグシンTg)のメサンギウム増殖性糸球体腎炎自然発症の分子機序を明らかにすることを目的とし、将来の腎炎に対するゲノム創薬に有用な評価系モデルの確立をめざす。 メグシンTgは、20週令頃から腎糸球体メサンギウム領域に免疫複合体沈着が亢進し、40週令ではヒトのメサンギウム増殖性糸球体腎炎と類似の病理像(メサンギウム細胞増殖、メサンギウム基質増生、免疫複合体沈着)を呈する。また発症前に腎負荷(抗糸球体基底膜抗体)を与えると、野生型に比し基質増生が持続し糸球体修復がかなり遅延することが明らかとなった。このことよりメグシンTgはメサンギウム基質の機能異常を呈し糸球体腎炎に至ることが明らかにされた。そこで評価系モデルとしての有用性を向上させるために、メグシンTgマウスの遺伝子背景改変(C3H, Balb/c)、多重遺伝子改変(自己免疫疾患モデルマウス、あるいは糖尿病性腎炎モデルマウスとの交配)、腎障害負荷(片腎摘出)などによる、高発症及び病像の均一化を試みた。その結果、1)メグシンTgに片腎摘出を施行すると20週令における糸球体障害率が亢進、2)ヒトメグシン高発現のMRL/lpr(自己免疫疾患モデルマウス)マウスは糸球体障害が有意に加速、3)メグシンTgマウスの腎炎発症率や進展の程度はマウスの遺伝子背景にほとんど依存しないことなどが明らかにされた。
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