研究概要 |
腹峡に対する酸化ストレスの病的意義を、核酸の酸化ストレスマーカー8-hydroxy-dcoxyguanine(8-OHdG)を使用して基礎的検討を行った。ラット腹膜炎モデルをヒビテンアルコールにより作製し、腹膜での8-OHdGの局在を酵素抗体法で検討した。光顕観察では、コントロール群は中皮細胞と中皮細胞下結合織が観察されるが、腹膜炎群では中皮細胞が剥離し、炎症性細胞浸潤が中皮細胞下結合織とその下の筋層にも観察された。この細胞はED-1陽性細胞であった。8-OHdGはコントロール群ではわずかに腹膜中皮細胞に染色が観察されるが、腹膜炎群では腹膜中皮細胞だけでなく、浸潤細胞にも強く染色が観察された。次に、培養ラット中皮細胞を用いて12穴の培養プレート上にそれぞれ1×10^5個の細胞を分け、4.25%,2.5%,1.5%のDianeal液をそれぞれ2m1添加後、48時間後にDianeal液中の8-OHdGを測定し比較した。透析液中の糖液濃度に比例して、8-OHdG量の増加が観察された。CAPD施行症例の腹膜生検組織における8-OHdGの局在を動物モデルと同様に酵素抗体法で検討した。正常腹膜組織では、腹膜中皮細胞に8-OHdGの存在が確認された。硬化性腹膜炎症例では、その染色性が増強した。硬化が進行した症例では腹膜中皮細胞が剥離し存在が確認出来なかった。さらにCAPD患者16例、急性腹膜炎を発症している入院患者2例についても排液中の8-OHdG量を測定した。その結果、8-OHdG濃度、排泄量は年齢との相関は観察されなかったが、透析期間とは正の相関が確認された。また、急性腹膜炎症例では、8-OHdG排泄量が多く、治療経過とともにその減少が確認された。今回、酸化ストレスによる腹膜障害が確認された。
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