今年度は、Moris water maze(水迷路)を行動評価法として用いるための基礎的実験と新生児期の低酸素性虚血負荷がその後の行動発達にどのような影響を与えるかについての検討を行った。さらに、海馬における神経細胞数と行動評価との相関を解析した。来年度には、これらの研究結果を基礎としてCaspase阻害物質の治療効果に関する検討を実施する予定である。 1)Moris water mazeを用いた学習行動評価方法の確立 生後21日目のラットを用い、水槽内における記憶学習行動を評価した。1日5試行で連続10日間の水槽内実験を行ったところ、プラットフォームまでの到達時間は、1日目は90.5±11.0秒であったのが10日目には12.3±5.2秒にまで短縮した。同時にデジタルビデオカメラ2台を用いて遊泳の状況を記録し、システムに連動したコンピュータによって遊泳距離、遊泳速度、方向転換回数などの画像解析を行った。これらの総合評価から21日齢のラットにおける標準的な行動評価法としての本法の有用性を確立した。 2)海馬における神経細胞数と行動障害の重症度との関係 生後7日目のラットの左頸動脈を結紮し、その後、恒温実験槽内で8%酸素下にて15分〜120分飼育して新生児仮死モデルを作成した。これらの仮死ラットを用いて、生後21日目に行動評価を行ったところ、対照群との間に明らかな差を認めた。さらに行動評価実験が終了した後に、これらのラットの脳を取り出して海馬CA1領域における神経細胞数を算定たところ、行動評価結果との間に有意な相関がみられた。
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