研究課題
Moris water maze(水迷路)を用いて、新生児期の低酸素性虚血負荷がその後の行動発達にどのような影響を与えるかを調べた。さらに、Caspase阻害物質(BAF)を負荷後に腹腔内に投与し、その治療効果について検討した。1)新生児期の低酸素性虚血負荷がその後の行動発達に及ぼす影響について生後7日目のラットをHIE群と対照群に分けた。HIE群はエーテル麻酔下で左総頸動脈を結紮離断した後、8%酸素下で2時間の低酸素負荷を行うことにより作成した。水迷路は、直径1.5mの水槽内に白く濁らせた水を張り、水面下2cmの深さに直径10cmの円形Platformを4カ所に設置した装置を用いた。学習行動実験を生後28日目から連続5日間施行し、水槽内の2カ所からラットを泳がせ、platformに到達するまでの水泳時間、水泳距離、速度をコンピューター画像解析によって求めた。HIE群と対照群の2群間に体重、遊泳速度に差はなく、運動能力は等しいと考えられた。しかし、HIE群では対照群に比して水泳時間、水泳距離が有意に延長しており、明らかな学習能力の低下を認めた。2)組織障害と学習障害の相関について行動実験後にラット脳を取り出し海馬CA1領域における神経細胞数を算定したが、行動評価結果との間に有意な相関は認めなかった。また、HIE染色による梗塞面積とも相関しなかった。3)Caspase阻害物質(BAF)の効果について低酸素性虚血負荷後にBAFを腹腔内に投与した。HIE群内において、BAF投与群と非投与群の間で学習能力に差がないかを検討したが、有意な差を認めなかった。しかし、一部の固体においては明らかな改善効果が認められており、今後、治療効果の差が障害部位の差によるものでないかを検討する必要があると考えられた。
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