研究課題
先の実験で我々は新生児期の視覚野において光のどの刺激に関係なく、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンが自発的でかつ律動的に変動をしていることを報告した。今回は生後1ケ月児で同様実験を行った。対象は1ケ月検診に訪れ、神経学的診断によって正常であると判断され、親のインフォームドコンセントが得られたものである。前回の報告と同じように日立社製光トポグラフィーを用いて、児の後頭部にプローベを装着し、安静睡眠時に計測を行った。その結果、前回と同じような自発的律動的変化を視覚野で確認することができた。しかし、酸化と還元ヘモグロビンの変化の関係は新生児とは大きく違っており、位相差は新生児では一定していたにもかかわらず、生後1ケ月児では大きくばらついていた。さらに新生児では二つのヘモグロビンの変化が広範囲にわたって同期していたが、今回はそうしたことがなかった。二つのヘモグロビンの自発的律動現象についてはいくつかの報告があり、前回我々はその位相差などからいわゆるBOLD効果によく似た現象ではないかと考察したが、今回も位相差にばらつきはあるものの、還元ヘモグロビンの変化に遅れて酸化ヘモグロビンが変化するといった関係は変わらなかった。生後2ケ月頃、視覚野ではシナプスの過形成が始まり、血流が成人よりも明らかに増大することが知られている。今回の我々の結果も、そうした時期に新生児期とは明らかに違った反応があることを示唆するものと考えられる。今後、脳波などとの関連を調べることにより、この変化のメカニズムや意義について明らかにしていきたい。
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