脳血流の周期的変化については、超音波ドップラー法や機能的核磁気共鳴装置置(fMRI)などを用いた研究で報告が見られる。近赤外分光法(NIRS)による新生児の脳組織表面のヘモグロビンの酸素化状態に関して、心拍数や血圧の変動との1対1的な相関が見られない律動的な変動が見られている。どの報告も律動の周期は1-6サイクル/分である。我々が見出したのもほとんど同じ周期の変動であった。我々の結果が先の研究結果と異なる点は、この変動が数平方cmにわたって見られ、生直後では全領域で同期しており、1ヶ月時ではこの同期現象が消失していたことである。またこの律動的変動は酸化および還元型ヘモグロビンの双方に見られたことであり、二つの時期に共通していた。そして、なおかつ還元型ヘモグロビンの変動に続いて酸化ヘモグロビンが変化したことである。しかし、その変動の位相差は生直後はほぼ一定であったのに比べて、生後1ヶ月では一定の位相差は見られなかった。また、新生児仮死の症例ではこの律動的変動が非常に強く見られるものもあった。生後1〜2ヶ月ごろ新生児の視覚野においてはシナプスの形成が急速に見られるようになる。この時期にほぼ一致してfMRIでは光刺激に対する反応がまったく逆転することをすでに我々は報告している。今回の研究でも生後1ヶ月で、自発的律動的変動が大きく変化した。シナプスの数が大きく増加するに伴って酸素代謝の状態が大きく変わることは受け入れやすい事実である。この現象が何らかの脳機能を反映していることが示唆されたといえよう。さらに生後2ヶ月以降の症例や脳障害の可能性のある症例での検討が必要である。
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