われわれは高頻度振動換気(HFO)と従来の換気法(CMV)の比較による過去の研究からCMVによる肺損傷に多核白血球及び各種メディエータが関与していることを指摘し、HFOに比べCMVにおいて換気後のTNFα値が高値であること、CMVによる肺損傷が抗腫瘍壊死因子(TNF)α抗体を気管内投与を行うことで軽減できる事から、TNFαが肺損傷に関与していることを示した。本年度はCMVによる肺損傷とTNFαの関係を明確にするため以下の2つの実験を行った。 1.pyrrolidine dithiocarbamate投与の実験 CMVによる換気で肺損傷にTNFαが関与していることから、TNFαの産生の機序として、人工換気による上皮細胞のshear stressがトリッガーとなりより肺胞上皮中の転写因子NF-κBが活性化されることが誘因であると考え、NF-κBの活性化を阻害するpyrrolidine dithiocarbamateを投与によりCMVによる肺損傷が予防できないかと考えて実験を行った。肺洗浄しサーファクタント欠乏状態とした家兎を用いて実験したが、高カリウム血症、不整脈をきたし1-2時間で死亡したため血液ガスの経過、肺の病変の判定はできなかった。 2.免疫組織染色 同じ肺洗浄しサーファクタント欠乏状態とした家兎を用い、肺胞上皮におけるTNFαの発現を免疫組織染色を行い検討した。肺損傷の少ないHFOと肺損傷の著明なCMVとを時間を追って比較した。その結果4時間の換気後CMVにて換気した群ではHFOによる換気の群に比しTNFαの発現が多いことが判明し、肺胞上皮もTNFα産生に関与していることが判明した。
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