分子形態学的手法を用いて、新生児脳循環障害におけるアポトーシスとその関連遺伝子の役割を、モデルマウスを用いて明らかにすることに取り組んできた。その結果、神経細胞のアポトーシスが周産期の脳循環障害においても不可欠であることが分かった。 <対象の作製>生後2週齢マウスを痲酔下に偽手術の対照群と5分間両総頚動脈を結索した新生仔虚血性脳障害モデル群を作製し、1-14日後に研究試料を作製した。 <新生仔脳循環障害のアポトーシス関連遺伝子発現の検討> 1.アポトーシスの評価:対象の脳組織をHE染色、nick end-labeling(TUNEL)法および免疫組織化学染色(IHC)を行った。 2.アポトーシス発現の評価:アポトーシスの形態と分布から、発達期脳における神経細胞死の変化を病理形態学的に検討し、新生仔脳循環障害のアポトーシスの重要な因子を検討した。 3.RNA probeの作製とin situ hybrydization法(ISH):アポトーシス細胞数が最大であった手術後7日の試料を用い、mRNA発現をISHで検索した。 <結果> 1.アポトーシスの評価:アポトーシスの評価をHE染色での核崩壊像とTUNEL陽性所見で行い、手術後7日で最大数であった。c-fosとBcl-2 familyの発現は3日後であった。 2.新生仔脳循環障害のアポトーシスの重要な因子として、c-fosとBcl-2 familyが確認できた。 <今後の展開>本研究の成果を今後、治療法の開発へ向けて展開する必要がある。c-fosとBcl-2 familyのmRNA発現が確認されたことは、これらのアンチセンスやsiRNA投与といった遺伝子治療の可能性が推察される。これを確認し、臨床応用へ発展させることが急がれる。
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