1.変異カルシウム感知受容体(calcium-sensing receptor : CaSR)の機能と病態との関連の検討 CaSRは、副甲状腺ホルモン分泌調節に必須の分子としてクローニングされた。既にCaSRの不活性型変異により、軽度の高Ca血症と比較的低Ca尿症を特徴とする家族性低Ca尿性高Ca血症(familial hypocalciuric hypercalcemia : FHH)が惹起されることが明らかにされていたものの、FHHに伴う副甲状腺病変の詳細は不明であった。我々は、手術により副甲状腺切除を受けた後にも高Ca血症が改善しなかった2症例に、CaSRの不活性型変異を証明した。これらの症例の副甲状腺組織は、lipohypertrophyと呼ばれる特殊な過形成像を示したことから、CaSRの不活性型変異は特殊な副甲状腺病変を惹起することが明らかとなった。 2.骨代謝異常症の病因の検討 腫瘍性くる病・骨軟化症(tumor-induced rickets/osteomalacia : TIO)は、稀な腫瘍随伴症候群の一つである。本症は原因腫瘍の摘除により完治することから、腫瘍から産生される液性因子が腎尿細管リン再吸収の抑制から低リン血症を惹起するものと考えられてきた。またこの液性因子は、副甲状腺ホルモンなどとは別に、リン代謝調節ホルモンとして作用している可能性も想定されてきた。我々はTIO惹起腫瘍に高発現する遺伝子のin vivoでの作用を検討するという方法により、TIOの惹起因子としてfibroblast growth factor(FGF)-23を同定した。今後このFGF-23の作用の解明は、リン代謝調節機構の理解に必須と考えられる。
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