研究概要 |
[研究目的]昨年度の本研究において、SIADHにみられるバソプレッシン(AVP)escape現象に、アクアポリン-2(AQP-2)水チャネルの遺伝子発現の抑制が関与することを示した。In vivoの実験系で、この変化はAVP受容体のdownregulaticmとは無関係で、細胞外液量の増大あるいは低血漿浸透圧が直接AQP-2の遺伝子発現を調節する可能性を示唆した。本年度の研究では、浸透圧の変化がAQP-2遺伝子発現を直接調節するか、AQP-2promoter遺伝子を用いて検討した。[研究方法]マウスAQP-2遺伝子5'上流をPGL3 basicベクター内のルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだコンストラクトを作製した。5'上流-1.1kb,-9.5kbおよび-9.5〜4.1kb間の8.4kbを組み込んだコンストラクトをそれぞれA2P-1.1,A2P-9.5,A2P-8.4とした。これらのプラスミツドをQIAGEN社のSuperFectによりMDCK細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション12,24,36時間後に培養液の浸透圧を100mmol/kgずつ上昇させて、最終的に600mmol/kgとした。また、0.5mM8-bromo-cAMP(8Br-cAMP)添加はルシフェラーゼ活性測定の6時間前に行った。さらに、-1.1〜-9.5kb上流をPCRで5分画に分けそれぞれPGL3 basicベクターに組み込み、高浸透圧に対する反応を測定した。[結果]CREを含むA2P-1.1,A2P-9.5は、8Br-cAMP刺激によりそれぞれ1.7,1.8倍に有意に増加した。一方、CREを含まないA2P-8.4は8Br-cAMP刺激で有意な上昇を認めなかった。600mmol/kgの高浸透圧培地ではA2P-1.1をトランスフェクションした細胞ではルシフェラーゼ活性の変化はみられなかったが、A2P-9.5およびA2P-8.4をトランスフェクションした細胞ではそれぞれ2.0倍、2.2倍に有意に増加した。また、A2P-9.5をトランスフェクションしたMDCK細胞を高浸透圧下で8Br-cAMPを添加すると、ルシフェラーゼ活性はさらに増加して両者の刺激が相乗的に作用することが示された。さらに、-1.11〜-9.5kb上流を5分画に分けた検討により、高浸透圧反応領域は-9.5〜-7.7kbと-6.0〜-4.2kbの2ケ所に存在することが判明した。[結論]マウスAQP-2遺伝子制御領域には高浸透圧刺激に反応して遺伝子発現を高める領域が存在する。この浸透圧反応領域とも言える遺伝子制御領域は、AQP-2遺伝子の-1.1〜-9.5kb上流域に少なくとも2ケ所存在することが示唆される。
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