研究概要 |
エストロゲンの多様性及び特異性をもたらす生理作用は、細胞内で結合するレセプター(ER)および共役因子群の厳密に制御された相互作用からもたらされると考えられ、これらの因子が時期及び組織特異的な下流遺伝子の空間的な転写・発現制御を行うことにより、生体内での劇的な生理作用を発揮する。性ステロイドホルモンに属するエストロゲンは、女性ホルモンとして性分化、性機能の調節に必須であるのみならず、骨代謝、脳代謝、血管新生等の多彩な生体生理作用に関連していることが知られている。 1)ERαとERβの活性型変異レセプターcaERαとcaERβを組換えアデノウイルスベクターを作製し、これらが実際にリガンド非依存的にERの転写活性を持つことが、明らかになった。さらにこれらの遺伝子を組み込んだコンディショナルトランスジェニック マウスを作成中である。また、これらの遺伝子改変動物を利用し、特に個体を丸ごと使用する実験系からしか得られない不妊、性周期、胎生期における発生への生理作用について分子から個体レベルまで総合的に解析することを目標とする。 (2)新規バイオマーカーとしてのERαとβの下流応答遺伝子の同定及び生体高次機能の解析。Differential Display法により、up-regulationする応答遺伝子群の単離を行った結果、マウス妊娠期の子宮細胞においてWntシグナルのレセプターに類似したFrizzled related Protein 4(sFRP4)の単離に成功し、sFRP4が妊娠期の子宮において何らかの機能を持つことを示唆した(J. Mol. Endocrinol. In press,2002)。さらにWntシグナルのアンタゴニストとして知られる、Dickkopfl KOマウスが胎生期の胎児で頭部形成と肢芽形成に関与していることを示した(Dev. Cell,1:423-434,2001)。
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