女性ホルモンはin vivoで骨密度の維持に最も重要な働きをしているホルモンである。本研究では、骨形成に関わる、骨芽細胞前駆細胞の骨髄間質細胞の分化に対する女性ホルモンおよびSERM (selective estrogen response modulator)であるタモキシフェン(TAM)の作用を検討した。細胞系として、マウスの骨髄間質細胞であるST2および、ST2にヒトエストロゲン受容体α(ERα)もしくはERβを過剰発現させたST2ERαもしくはST2ERβを用いた。これらの細胞は、bone morphogenetic protein-2 (BMP-2)の添加により、alkaline phosphatase (ALP)陽性の骨芽細胞および脂肪細胞への分化が促進され、troglitazone (Tro)の添加により脂肪細胞への分化が促進させる。17β-estradiol (E2)は、用量依存的にBMP-2によるALP誘導を増強する一方、BMP-2あるいはTroによる脂肪細胞分化を抑制した。また、peroxisome proliferator-activated receptor γ2 (PPARγ2)およびadipsinのmRNA発現を抑制した。これらのE2効果は総て、2型ER拮抗薬の同時添加により阻害された。また、ST2ERαとST2ERβの間で、E2効果の質的差異は認められなかった。一方、TAMは同じ系において、骨芽細胞分化については抑制的に作用し、E2によるALP誘導を阻害したが、脂肪細胞分化に関しては、E2同様に抑制し、このTAM作用は2型ER拮抗薬により阻害された。ST2ERαとST2ERβの間で、TAM効果の質的差異は認められなかった。したがって、ERを介した骨髄間質細胞の分化調節は、骨芽細胞分化と脂肪細胞分化については異なる分子機序を介しておこなわれていることが明らかになった。
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