原発性副甲状腺機能亢進症または長期間透析後に生じた続発性副甲状腺機能亢進症のために当院内分泌外科にて摘出された副甲状腺腫切片(200-500mg)を入手し、コラゲナーゼ処理により細胞を分離したあと、24穴ディッシュにて単層培養したあと、培養液中に分泌されてくる副甲状腺ホルモン(PTH)を測定して、これまで基礎的培養条件を検討してきた。しかし、酵素処理により、採取されてくる細胞数が激減してしまい、期待したほどのtotal RNAが得られないことが判明した。 そこで、最近では、酵素処理せずに、細切した副甲状腺切片を器官培養する方法に変更して、基礎的培養条件を検討中である。副甲状腺細胞は、酸素や栄養素を活発に要求する細胞でなので、単層培養ではなく、培養液中に浮遊させたコラーゲンゲル上で、酸素を十分に取り込めるようにして培養してあげた方が、PTHの分泌も良好なようであり、現在、基礎的な培養条件を整えつつある。なお、我々の実験では、リンやカルシウム濃度を変えて培養するので、最近、リンやカルシウムを含まない培養液(MEM)を特注した。一般に、cDNA microarrayを行うには、質のよいtotal RNAが30μg以上必要であり、如何に大量の副甲状腺細胞を培養できるかが、この研究の最大の問題点である。 ところで、当病院では、バセドウ病患者の甲状腺亜全摘術の時に、甲状腺細胞を大量(〜10グラム)に入手できる。そこで、予備的な実験として、甲状腺濾胞を短期間、浮遊培養し、TSHを添加して1-2日後にtotal RNAを抽出し、蛍光ラベルしてcDNAを作成した後、2400個の遺伝子を一度に解析できるNEN社製のkit(MICROMAX)を用いて、cDNA microarrayを行った。その結果は、本年度の内分泌学会や甲状腺学会で発表し、論文は現在、投稿中である。
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