グレリンはGHS(growth hormone secretagogue)受容体の内因性リガンドとしてラットの胃から同定された。グレリンは胃のみならず視床下部および下垂体にも発現されており、その受容体GHS-Rは視床下部と下垂体に存在する。従って、グレリンには末梢作用とともに中枢作用が存在することが想定される。本研究ではまずグレリンの中枢作用について検討した。グレリンを慢性的にラットに中枢投与し、GHの分泌動態、摂食量、発育や行動を観察し、GHの分泌調節にかかわる神経ペプチドや摂食関連ペプチドの遺伝子発現を検討した。グレリンを72時間にわたりラットに中枢投与すると、視床下部に存在する摂食促進ペプチドであるNeuropeptideYとAgouti-related protein(AGRP)の遺伝子発現は増加し、摂餌量と体重が対照ラットに比べ有意に増加した。一方、GH分泌調節に関与するGHRHとソマトスタチンの遺伝子発現に変化はなく、GHの分泌も変化しなかった(Diabetes)。次に下垂体グレリンの遺伝子発現について検討した。我々は、下垂体グレリンの遺伝子発現が、日齢およびGHRH依存的な制御を受けていることを見出し報告した(Endocrinology)。更に、下垂体グレリン受容体(GHS-R)の遺伝子発現について検討し、甲状腺ホルモンにより下垂体グレリン受容体の遺伝子発現は正の調節を受けていることを明らかにした(J Neuroendocrinol)。
|