研究概要 |
グレリンはGHS(growth hormone secretagogue)受容体の内因性リガンドとしてラットの胃から同定された。グレリンは胃のみならず視床下部および下垂体にも発現されて,おり、その受容体GHS-Rは視床下部と下垂体に存在する。従って、グレリンには末梢作用とともに中枢作用が存在することが想定される。本研究ではまずグレリンの中枢作用について検討した。グレリンを72時間にわたりラットに中枢投与すると、視床下部に存在する摂食促進ペプチドであるNeuropeptide YとAgouti-related proteinの遺伝子発現は増加し、摂餌量と体重が対照ラットに比べ有意に増加した。一方、GH分泌調節に関与するGHRHとソマトスタチンの遺伝子発現に変化はなく、GHの分泌も変化しなかった(Diabetes)。次に下垂体グレリンの遺伝子発現について検討し、下垂体グレリンの遺伝子発現が、日齢およびGHRH依存的な制御を受けていることを報告した(Endocrinology)。視床下部弓状核のGHS-Rを選択的に合成阻害する組織特異的GHS-Rアンチセンストランスジェニックラットを作製し、このラットは成長障害をきたすことを報告し、その機序についても検討し、視床下部グレリン/グレリン受容体系の生理的意義について明らかにした(J Clin Invest 2002)。また視床下部弓状核欠損ラットでは外因性グレリンのGH分泌促進作用は保たれるが、摂食促進作用は消失することを報告し(Endocrinology 2002)、グレリンの摂食促進作用発現には視床下部弓状核の存在が不可欠であることを明らかにした。さらにStreptozotocin誘発糖尿病ラットでみられる過食にグレリンの過剰分泌が関与していることを報告し、グレリンの病態生理学的意義に付いても明らかにした(Endocrinology 2002)。
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