エストロゲン依存性の増殖を示すMCF-7B細胞を長期間エストロゲン枯渇下で培養することにより得られた耐性株MCF-7Dと親株であるMCF-7Bにおけるエストロゲンレセプターα(ERα)の転写活性について検討を行った。エストロゲン応答配列(ERE)をチミジンキナーゼプロモーターの上流に連結させたルシフェラーゼレポーター遺伝子を導入し、各種エストロゲン濃度下での内因性ERαの転写活性について検討したところ、耐性株MCF-7Dはエストロゲン枯渇下でもERαの転写活性が認められた。さらにエストロゲン濃度依存的に転写が亢進され、1nMで極大に達した。一方、親株MCF-7Bでは100nMで極大に達し、これらの細胞間でエストロゲンによる活性化機構に違いがあることが示唆された。さらにERαの2つの活性化ドメインAF-1とAF-2の活性化能を、Gal4DBDとの融合蛋白質として各細胞内で発現させレポーター遺伝子を用いて解析を行ったところ、AF1ドメインではエストロゲンの濃度によらずMCF-7Dで約4倍の転写活性化能が認められた。また、AF-2ドメインでは、エストロゲン枯渇下でもMCF-7Dで転写活性化能があり、1nMで極大に達したのに比し、MCF-7Bでは0.1nMより転写活性化が認められ、100nMで極大に達した。これらの転写活性化の違いを明らかにするために、EREをタンデムに連結したものを足場とするDNA-pull むdownを行った。MCF-7Bではエストロゲン存在下でのみ、Coactivatorが複合体に含まれていたが、一方MCF-7Dではエストロゲン枯渇下でもERαに結合するCoactivatorが同定された。以上よりMCF-7Dではエストロゲン枯渇下でエストロゲンによらないCoactivatorをリクルートするERαの活性化メカニズムの存在が示唆された。
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