エストロゲン依存性の増殖を示すMCF-7B細胞を長期間エストロゲン枯渇下で培養することにより得られた耐性株MCF-7Dと親株であるMCF-7Bにおけるエストロゲンレセプターα(ERα)の転写活性の違いをすでに見出している。本年度はこの制御を明らかにするためにMCF-7DにERαの転写活性化ドメインであるAF-1あるいはAF-2とGal4DBDのDNA結合ドメインを連結したキメラ遺伝子を安定に発現する形質転換株を用いて、さらに詳細な検討を行った。1)内在性ERαと同様にGAL4DBD AF-2安定形質転換株MCF7-D細胞はより低濃度(10^<-9>M)のE2でAF-2ドメイン由来転写活性が飽和する。2)E2存在下でMCF7-D細胞ではGAL4DBD AF-1転写活性がICI濃度依存的に抑制される。3)内在性ERαとは異なり、E2枯渇条件下でAF-2ドメインによる転写活性はICI耐性に大きな差異は認められなかった。以上よりMCF-7D細胞では、ERαの持つ2つのドメインAF-1 AF-2はそれぞれE2に対する応答性があることが示唆された。一方、EREをモチーフとするDNA-pull down実験により、E2存在下・非存在下におけるMCF-7DとMCF-7Bの間に転写活性化に関与する蛋白質コンプレックスに違いが認められた。さらにGAL4DBD AF-2安定形質転換株を用いてGal4DBDをモチーフとするDNA-pull down実験を行ったところ、両細胞株間で著しい違いは認められなかった。また、細胞生物学的な実験によりMCF-7D細胞におけるMAPKの恒常的活性化が直接的にERαの活性化を担っている事を明らかにしており、ERαの転写活性化がリン酸化により制御されており、エストロゲン枯渇耐性獲得において共役因子のリクルートが関与していることが示唆された。
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