研究概要 |
エストロゲン依存性の増殖を示すMCF-7B細胞を長期間エストロゲン枯渇下で培養することにより得られた耐性株MCF-7Dと親株MCF-7Bを用いて乳癌のエストロゲン枯渇耐性におけるエストロゲンレセプターα(ERα)の関与について検討した。エストロゲン枯渇条件で培養したMCF-7D、MCF-7B両細胞の細胞内のエストロンおよびエストラジオールの濃度に大差は無く、細胞内でのエストロゲン産生とは関係が無いことを明らかにした。次に両細胞におけるERαの転写活性について検討を行った。エストロゲン応答配列(ERE)をプロモーター上流に有するレポーター遺伝子を導入し、各種エストロゲン濃度下での転写活性を検討した。エストロゲン枯渇下でもMCF-7D細胞は内因性ERαの転写活性が認められた。さらにERαの活性化ドメインであるAF-1ならびにAF-2は、それぞれがエストロゲン枯渇下のMCF-7D細胞における活性化に寄与していることをGAL4のDNA結合ドメイン(DBD)を連結したキメラ遺伝子を一過的に導入することにより明らかにした。この活性化メカニズムをさらに詳細に検討するため、これらのキメラ遺伝子を安定に発現する形質転換株を作成した。MCF-7D細胞では、AF-1、AF-2いずれのドメインもE2によって活性化を受け、その活性は抗エストロゲン剤ICI182,780により、効果的に阻害された。さらに、ERE断片を足場とするDNA-pull down実験により、転写活性化に関与する蛋白質コンプレックスに違いが認められた。また、MCF-7D細胞におけるMAPKの恒常的活性化が直接的にERαの活性化を担っている事、このMAPKの活性化には膜結合型ERαが関与していることを明らかにした。
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