研究概要 |
肝臓におけるトリグリセリド(TG)の合成亢進がもたらす動脈硬化性リポタンパク形成への影響を検討するために、SREBP-1cトランスジェニクマウスとLDL受容体欠損マウス(LDLRKO)のダブルミュータントマウス(BP1c/LDLRKO)を作製し、そのリポタンパクの性状を検討した。BP1c/LDLRKOは、LDLRKOに比べ、血中トリグリセリドの著明な増加とコレステロールの軽度の増加を認めた。この傾向は空腹時採血よりも食後採血において著明であった。アガロース電気泳動では、β位(LDL分画)が増加しているLDLRKOに比べ、BP1c/LDLRKOではpreβからβにかけてbroadβバンドの増加が認められいわゆるレムナントリポタンパクの増加が示された。さらに詳細にLDLの分画を比較するとそのピークがややHDL側にシフトしており、LDLのサイズがわずかながら減少していることが示され、small dense LDLの産生が示唆された。 肝臓のノーザンプロット解析によれば、中性脂肪合成制御転写因子であるSREBP-1cの過剰発現により、FAS, ACC, SCD1, FACEをはじめ脂肪酸合成、中性脂肪合成酵素の発現が増加しており、肝臓でのTG合がたかまっている。それが肝臓においてVLDLの産生を増加させかつ相対的にTGリッチな変化をおこした。さらにLDLR欠損によりTGアポB含有リポタンパクの血中停滞のため上記のようなレムナント血症が発症したと考えられる。レムナントならびにsmall dense LDLは極めて動脈硬化惹起性が強いことが知られており、さらなるリポタンパクの解析と動脈硬化症の自然発症を検討中である。本ダブルミュータントマウスは過食、過飲にもとづく肝臓での脂肪合成増加が、動脈硬化惹起性リポタンパクの合成増加をきたし、メタボリックシンドロームのモデル動物として有用であり、動脈硬化の自然発症が期待される。
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