研究課題
新生ラットの膵臓から導管細胞を採取し、その培養系を確立した。この培養導管上皮細胞は速やかに増殖してコロニーを形成する傾向にあった。この細胞は幹細胞増殖因子の受容体であるc-Metを発現し、また導管上皮のマーカーであるサイトケラチンを発現していた。腺房細胞のマーカーは発現していなかった。またこの細胞は神経マーカーであるPGP9.5やニューロフィラメント、さらに転写因子であるPDX-1を発現していた。この細胞は高グルコース培地で培養を続けると一部がクラスターを作り、その中にはインスリンを発現する細胞やグルカゴンを産生する細胞が出現したが、その頻度は高くなかった。アミラーゼ産生細胞は出現しなかった。一方、培養導管上皮細胞に分化誘導因子アクチビンを添加するとPGP9.5の発現は増強し、さらに転写因子neurogenin3の発現が誘導された。またそれに引き続いてGLUT2やpancreatic polypeptideの発現も認められた。この細胞にさらにベータセルリンを添加すると細胞は神経様突起を伸展し、その先端に強くインスリンを発現した。アクチビンとベータセルリンを同時に添加した場合、約70%がインスリン陽性細胞に分化した。これらの結果から、新生ラットの膵導管上皮細胞は導管マーカーとともに神経内分泌マーカーを発現し、β細胞へと分化する能力をもった内分泌前駆細胞としての性質を有していることが明らかになった。
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