研究概要 |
ウイルスベクターを用いる遺伝子導入は安全性に問題がある。我々はウイルスベクターを用いずに、新たに開発されたリポソームにリガンドを結合させ、受容体を介して遺伝子を導入する安全な技術を改良した。一方、家族性高コレステロール血症は著明な高コレステロール血症を呈し、若年から冠動脈疾患を惹起する重要な疾患であり、LDL受容体欠損が原因であることがすでに明らかにされている。我々は、本疾患のモデル動物であるWHHL家兎に新たに開発した方法を用いてLDL遺伝子の導入を試みた結果、導入に成功した。 合成陽性脂質である(+)-N, N[bis(2-hydroxyethyl)-N-methyl-N-[2,3-di(tetradecanoyloxv)propyl]ammonium iodideと中性脂質であるDOPEからなるリポソームに対して、transferrinのリガンドを結合させた後、rabbit LDL受容体cDNAを高発現プロモーターを含むベクター(pTARGET)に結合させたconstructを用いてリポソーム-リガンド-DNA複合体を作成した。これをWHHL家兎に静注投与した後、血漿LDLコレステロール値を経時的に測定した。LDL受容体cDNA投与量は50μgとした。 LDL受容体cDNA450μg静注投与により、最大10%の低下と3週間の効果持続を確認した(Gene Therapyに掲載予定)。また、リンパ球におけるLDL受容体遺伝子発現を確認した。今後、研究をさらに発展させて、LDL受容体cDNA投与量の増加および操り返しの投与により、LDL受容体遺伝子発現を増加させ、LDLコレステロール低下作用の増加および推持が可能であるか確認したい。
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