研究概要 |
実績1:酸化LDLの血管内皮細胞のトロンボモジュリン(TM)発現抑制機序について検討した。その結果、酸化LDLによるTM転写抑制は、酸化LDLに含まれるリン脂質成分、なかでも酸化PAPC(1-palmitoyl-2-arachidonyl-sn-glycero-3-phosphocholine)がRARb-RXRa複合体のTMプロモーター内のDR4領域への結合やSp1、Sp3のSp1領域への結合を低下させることによるものと推察された。酸化LDLが内皮細胞上のどのような受容体に結合し、このような作用を発揮するのかについては検討中である。 実績2:内皮細胞に限らず、単球-マクロファージにもTMの発現が認められるがその意義は明らかではない。THP-1細胞はTMを発現しており、酸化LDLによりその発現が増強される一方、PPARγのリガンドであるpioglitazoneによってもTMの発現が増強されることを明らかにした。 実績3:スタチンによる血管内皮細胞のTM発現機序につき検討した。その結果、スタチンは濃度および時間依存性にTM蛋白量ならびにmRNA量を増加した。geranylgeranyltransferase-I阻害薬のGGTI-286、Rho蛋白familyの不活化薬であるClostridium difficile Toxin B (TcdB)によりTM発現は増強し、Rho蛋白の中で、Rho-A,Bを阻害薬するClostridium botulinum C3 exoenzymeやRho associated kinase阻害薬のY-27632ではTM発現は変化せず、RacとCdc42を阻害するClostridium sordellii lethal toxinにて著明に増加したことより、スタチンによるTMの発現増加はRho蛋白のRacあるいはCdc42の阻害を介したものであることが明らかとなった。
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