近年、糖尿病合併症の発症に酸化ストレスが関与している可能性が注目されているが、糖尿病腎糸球体に酸化ストレスが生じているかは明らかではない。今回、糖尿病腎糸球体における酸化ストレスが関与しているか否かを明らかにするため、4週齢のストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットの腎糸球体における酸化ストレスの増強とその発症機構を検討した。 酸化ストレスマーカーである8-hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG)の尿中排泄量は糖尿病ラットで有意に増加しており、その増加はインスリン治療群およびPKC-β阻害薬投与群で抑制された。糖尿病ラット糸球体における8-OHdG免疫組織染色は増強しており、インスリン治療およびPKC-β阻害薬投与群で同様に抑制された。次に、ルシゲニン法を用いて測定した糸球体のスーパーオキサイド産生量は、糖尿病糸球体で増加しており、インスリン治療群およびPKC-β阻害薬投与群で抑制された。このスーパーオキサイドの産生はNADPHを基質としており、NADPHオキシダーゼの阻害薬であるdiphenylene iodonium (DPI)で抑制された。NADPHオキシダーゼの構成成分であるp47phoxとp67phoxのmRNAおよび蛋白発現は糖尿病ラット糸球体で増加していた。さらにp47phoxとp67phoxの膜分画への移行は糖尿病糸球体で増加しており、この膜移行はPKC-β阻害薬投与群で抑制された。次に、PKC-β2を過剰発現させた培養メサンギウム細胞ではp47phoxとp67phoxの膜移行が促進され、細胞内酸化ストレスは増強していた。以上の研究から、糖尿病腎糸球体では早期より酸化ストレスが増強していることが明らかとなった。またこの酸化ストレスの増強にはPKC-βの活性化を介したp47phoxとp67phoxの膜移行が重要であることが示唆された。
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