研究概要 |
生体時計関連遺伝子であるcry1,cry2のダブルノックアウトマウス(cry1^<-/->cry2^<-/->マウス)は経口ブドウ糖負荷試験にて負荷後15分、30分、60分にてインスリン分泌不全による明らかな耐糖能障害を呈した。しかしながら負荷後90分、120分では野生型マウスと変わらない血糖値に戻った。この現象を細胞レベルで確認するためにコラゲナーゼ法を用い膵ラ氏島を単離しbatch incubationを行ったところダブルノックアウトマウスでは8.3mMまたは16.7mMグルコース刺激に対するインスリン分泌が野生型に比し約50%低下していることが確認された。更に膵臓潅流法を用いた実験では16.7mMグルコース刺激によるインスリン分泌反応の第1相の約50%の低下を野生型に比して認めたが、第2相分泌は保たれていた。病理組織学的にはダブルノックアウトマウスにおいて膵ラ氏島に肥大を認めた。免疫組織学的手法を用いた抗インスリン蛍光抗体染色では膵ラ氏島内のインスリン量は野生型マウスとほぼ同等であった。インスリン負荷試験にてダブルノックアウトマウスはインスリン感受性が亢進していることも明らかになり、経口ブドウ糖負荷試験時の90分、120分後の血糖正常化に一部関与していることも示唆されている。 以上のことより生体時計関連遺伝子であるcry1,cry2によりグルコース刺激による初期インスリン分泌反応が制御されていることが明らかになった。またダブルノックアウトマウスでは野生型と比較しして、成長遅延が生後4週より認められたが、摂食量には差が認められなかった。このことによりcry1,cry2は成長ホルモン分泌、骨代謝制御にも関わっている可能性が示唆された。
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