研究概要 |
アクアポリン・アディポース(AQPap)は脂肪組織特異的に発現するグリセロールチャネルである。マウス及びヒトAQPap遺伝子のプロモーター領域に核内受容体型転写因子PPARγ(peroxisome proliferator activated receptor)が結合するPPRE(peroxisome proliferator response element)を認め、この転写調節機構によりAQPap遺伝子は脂肪組織特異的に発現することを明らかにした。さらに、7塩基配列のinsulin negative response elementをAQPapのプロモーター領域に認め、インスリンにより抑制されるAQPapの発現調節に関与することが示唆された。さらに、AQPapのヒトにおける生理的意義を解明するため、ヒトAQPap遺伝子の構造を明らかにした。160人の遺伝子解析を行い、3つのミスセンス変異(R12C, V59L, G264V)と2つのサイレント変異(A103A, G250G)を見出した。それらAQPapヘテロ変異と肥満及び糖尿病との関連性は見られなかった。同定したAQPap遺伝子変異蛋白の機能解析をXenopus oocytesを用いて行い、AQPap-G264V蛋白はグリセロール透過能を欠失していた。AQPap-G264Vホモ変異例は、AQPap-wildと同様に運動負荷時ノルアドレナリン濃度が上昇するが、血中グリセロール濃度の上昇は遅延しており、AQPap遺伝子が運動時の血中グリセロール濃度の上昇に関連することが示唆された。 現在、F1マウスが誕生してきており、今後交配により個体数を増やし、ヘテロ型とヘテロ型との交配で誕生したマウス(野生型、ヘテロ型、ホモ型)の経時的な体重変動や代謝パラメーターを観察し、同時にマウスの遺伝的背景をより均一化するためにbackcrossを進め、生体内におけるグリセロール代謝を中心としたAQPapの生理的・病態的意義を明らかにしていく予定である。
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