研究概要 |
我々は膵β細胞に発現している転写因子であるhepatocyte nuclear factor-1α (HNF-1α)の遺伝子異常がそれぞれMODY3の原因であることを明らかにした(Yamagata K. Nature 1996)。HNF-1αが膵β細胞の発生・分化・増殖に関与しているか否かについてはこれまで不明であった。まずHNF-1α特異的抗体を用いて、マウス膵におけるHNF-1αの発現様式について検討をおこなった。その結果、HNF-1αは胎生期からadultにおいて、β細胞を含むすべての内分泌細胞に発現していることが判明した。HNF-1αの膵における発現は胎生10.5日に始まり、膵β細胞の発生に重要な転写因子群であるNkx22, Isl-1, Pax-6, PDX-1の発現に引き続きおこることが明らかになった。 さらにヒトHNF-1α遺伝子異常で最も頻度の高いdominant negative作用を有しているP291fsinsC変異(Yamagata K. Diabetes 1998)をTet-On systemを用いたin vitroの系,およびtransgenic mouseを用いたin vivoの系で膵β細胞に過剰発現させたところ、増殖因子IGF-1の発現低下と共に膵β細胞増殖能・β細胞数の減少が認められた。膵β細胞増殖能低下はIGF-1を加えることにより回復した。 これらの結果から、HNF-1αは胎生早期から膵β細胞に発現し、IGF-1を介して膵β細胞の増殖・発生に関与している可能性が示された。
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