本研究ではインスリン作用に関わる新規な遺伝子を同定しその機能の解析を試みた。まず、金属キレートイオンアフィニティカラムを用いてインスリン依存性にリン酸化される新規な新規蛋白の精製・同定を試みた。既知のリン酸化蛋白との結合性の検討から、ガリウムイオンを用いた金属キレートカラムが高効率にリン酸化蛋白を吸着することが明らかとなった。そこで、3T3-L1脂肪細胞の可溶化分画から本カラム用いてリン酸化蛋白の精製を試みたが、細胞へのインスリン処理によりで有意にカラムヘの吸着が増加する蛋白を同定できず、本アプローチは中止した。次に、インスリン依存性に発現が制御される遺伝子の同定のためDNAマイクロアレイを用いた解析を行った。肝臓における遺伝子発現の摂食・絶食による変動、インスリン欠乏動物へのインスリン投与による変動、肝臓特異的インスリンシグナル遮断マウスでの変動をGene Chipにて解析した。発現変化が生じる遺伝子の中で、特に転写因子に着目し、初代培養肝細胞において各種ホルモン薬剤刺激による発現変動を検討した。その結果、転写因子Stra13がインスリンによりPI3キナーゼ依存性に発現誘導されることを明らかとした、また、インスリン誘導性のbasic helix-loop-helix型転写因子やLeucine zipper型転写因子、インスリン拮抗ホルモン誘導性のC2-H2 zinc finger型転写因子などを同定した。特にインスリン拮抗ホルモン誘導性zinc finger型転写調節因子は、糖新生系律速酵素の遺伝子発現を誘導するという結果が得られており、肝における糖新生のインスリン依存性の調節に関与する可能性が示唆されている。
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