糖尿病で形成が亢進する糖化反応中間体methylglyoxal (MG)は、高反応性のジカルボニル化合物で細胞障害性を有しているため糖尿病細小血管症進展の原因物質となり得ることが提唱されている。これに対する生体内防御機構として、glyoxalase-1 (GLO1)とglyoxalase-2の二つの酵素によってMGを非活性物質に代謝するglyoxalase systemの重要性が指摘されている。本研究では、GLO1のノックアウトマウスを作製し、高MGレベルのマウスにおける細小血管構成細胞に現れる機能変化を解析することを目的としている。平成13年度には、既知のヒトGLO1 cDNA塩基配列を参考にしてマウス肝cDNAライブラリーを鋳型にPCRを施行し、次にそのPCR産物をプローブとしてマウス肝cDNAライブラリーから552bpのopen reading-frameを含む全長のマウスGLO1 cDNAをクローニングした。ヒトGLO1 cDNAとの相同性は、塩基配列では82%、アミノ酸配列では89%であることも判明した。平成14年度には、クローニングした複数のマウスGLO1 cDNAについて塩基配列を確認したところ、開始コドンから225番目の塩基がチミンのものとシトシンのものの2種類が存在し、アミノ酸組成には影響を与えないsilent SNPである可能性が考えられた。次に、クローニングしたGLO1 cDNAの塩基配列情報からコドン開始部位を含むプローブを作製し、これを使ってマウス肝ゲノムライブラリーからハイプリダイゼーション法によってゲノムDNAのスクリーニングを行っており、現在、塩基配列解読中である。 今後、ターゲッティングベクターを構築した後、通常の方法によりGLO1遺伝子ノックアウトマウスを作製し、その動物におけるMGの代謝変化とそれに伴う細小血管の機能変化を解析していく。
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