チアミン反応性貧血症候群(OMIM 249270)は巨赤芽球性貧血と糖尿病、難聴を三主徴とし、チアミンの大量投与によりそれらの症状が軽減する.本症の原因異常酵素として補酵素チアミンピロリン酸合成に必須であるチアミンピロホスホキナーゼ(TPK)とチアミン輸送タンパク質のいずれかが考えられていたが、申請者らは本症の原因遺伝子(THTR1)を決定し、THTR1が高親和性チアミン輸送タンパク質をコードすることを明らかにした.さらにヒトおよびマウスのTPK cDNAを単離し酵素学的性質を解析した.しかし、本症で見られる多様な症状の発症機構は未だ不明である.そこで、モデルマウスを作成し固体レベルで本症の発症機構を解明することを目的として、まずマウスのTHTR1 cDNA(mTHTR1)を単離した.mTHTR1の翻訳可能領域をHeLa細胞にtransientに形質導入させ^<14>C-チアミンの取込みを測定したところ、コントロールに比して約2倍の活性を示した.マウス肝cDNAライブラリーから調製した数個の5'-RACE産物の結果から、mTHTRlの転写開始部位は翻訳開始コドンの上流-175と-183に位置した.一方、動物細胞におけるTPKの発現調節機構も全く不明である.そこで、hTPK1翻訳開始コドンの5'上流領域2kbを単離し、ヒト肝培養細胞HepG2における転写活性化領域をluciferase活性を指標に解析したところ、SP-1配列を含む-0.54〜-0.49kb間がhTPK1の発現に必要であり、Spl siteに変位を導入するとプロモーター活性が大きく低下することが明らかとなった.また、HepG2細胞核抽出液にはSpl siteを含む-514〜-491の配列に結合するタンパク質が存在することがgel shift解析で確認された.以上の結果からhTPK1の発現はSolsiteを介して調節されていると思われた.
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