インスリン抵抗性患者から発見されたPPARγの優性抑制型変異体(P467L)を培養マウスβ細胞のMin6にトランスフェクトするとインスリンプロモーター活性は増強した。β細胞にもPPARγは発現しており、変異PPARγが血糖上昇を介さず、直接高インスリン血症を引き起こす可能性が示唆された。これを個体レベルで検証するため、PPARγの優性抑制型変異体を発現するトランスジェニックマウスの作製を試みた。ベクターの構築にはCre-loxPシステムを利用した。比較的ユビキタスに作用する強力なプロモーターであるCAGプロモーターの下流にloxPで挟まれたネオマイシン耐性遺伝子(neo^r)を挟んで、変異PPARγのcDNAを挿入し、Creリコンビネースの作用でneo^rが切り取られると変異PPARγが発現するようベクターを作製した。このマウスが作製できれば種々の組織でCreを発現するトランスジェニックマウスとの掛け合わせにより、脂肪、筋肉、肝臓、β細胞等で特異的に変異PPARγが発現した場合の個体の糖代謝への影響を検討できる可能性がある。現在ベクターを精製し、マウス受精卵への最初のインジェクションが行われたところである。
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