研究概要 |
本年度のプロジェクトの目的は、成体組織に存在する幹細胞から膵ランゲルハンス島(ラ島)が再生する過程において、必要な増殖因子と組織環境を明らかとし、少ない膵管上皮細胞から効率よくラ島を分化再生する方法を樹立することである。まず、ミニブタを用いた研究を始める前に、条件検討を行う目的でマウスによる実験を行った。マウスから膵臓を摘出しcollagenase処理後Ficollにより膵管上皮細胞を遠心分離した。Bonner-Weirらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97 : 7999-8004, 2000)に従い、Monolayer sheetを得、薄いマトリジェルをさらにその細胞層に重層して細胞を重層培養した。これにより膵管上皮細胞が3次元的に発育し、ラ島様のクラスター(cultivated islet buds : CIBs)の形成が可能となる。現在、マトリジェルを用いた3次元培養を行い観察している段階である。 また、効率よくラ島を分化再生する方法を樹立するためには 1)どこに膵幹細胞の存在部位するのか、2)膵幹細胞がいかなる刺激で誘導されるのか、3)どのような環境で増殖しうるのか、を明らかにすることが重要である。糖尿病を誘発するためにStreptozotocin(STZ)を用い、膵β細胞再生に良い環境としてラットの腹腔内が最適であると考えた。現在、STZ(200mg/kg、i.p.)投与により糖尿病を誘発し3ヶ月間飼育している。ラット膵臓を摘出後、一部を病理組織学的検討としてインスリン染色を行う。また、レーザーマイクロダイセクッションを用いて、膵管周囲細胞やランゲルハンス氏島周囲細胞を集め、これらの細胞からtotal RNAを抽出しinsulin遺伝子、pdx-1遺伝子、ngn-3遺伝子発現の有無について検討を行う予定である。
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