研究概要 |
1.RAGEの新規リガンドであるS100A12の発現調節機構を明らかにする。 THP-1細胞より分化誘導したマクロファージを用いRAGEのリガンドであるS100A12の発現を定量した。S100A12 mRNAはTNF-α、TGF-β、IL-1β、MCP-1、insulin、酸化LDL添加では変化を認めなかったが、IL-6で有意な増加を認め、PPARγのリガンドであるpioglitazoneでは有意な減少を認めた。IL-6によりS100A12 mRNAは約2倍に増加し、そのED_<50>は約3ng/mlであった。また、その培養上清中のS100A12たんぱく質をもIL-6添加20時間後に約20%の有意な増加を認めた。これらの増加はJAK inhibitorであるAG490により完全に阻害された。しかしMEK inhibitorであるPD98059ではそれは阻害されなかった。 一方pioglitazone添加によりマクロファージのS100A12 mRNAは24時間後には30%以下に減少した。そのED_<50>は約10μMであった。またIL-6(100ng/ml)によるS100A12 mRNAの増加は、pioglitazoneと前ふ置することにより完全に阻害されることを明らかにした。 2.ヒト血中S100A12たんぱく質濃度の測定と臨床病態学的意義の検討。 ヒト血中S100A12濃度をその特異抗体を用いたELISA法にて測定した。糖尿病愚者41例(DM群)、非糖尿病患者35例(NDM群)において血中S100A12たんぱく質濃度を比較すると、DM群19.98±10.33 vs NDM群8.11±1.61ng/ml(p<0.01)とDM群で有意に高値を示した。また血糖値、HbA1c、中性脂肪値がDM群で有意に高値を示したが、年齢、BMI、LDL-C、HDL-C、白血球数値は両群間に差を認めなかった。これらを独立因子候補として全症例における多変量解析を行うと、HbA1c値(p=0.171,R=0.648)および白血球数(p=0.0166,R=0.325)が血中S100A12濃度の有意な独立規定因子であることをあきらかにした。
|