研究概要 |
EIF2AK3遺伝子変異の同定 当大学病院及び関連施設の千数百症例の糖尿病患者群の中から、家族歴が濃厚でかつ20才以下で発症した症例で、グルカゴン負荷試験によりインスリン分泌能が低下していることが確認され、GAD抗体、IA-2抗体が共に陰性であった27症例と,正常耐糖能者3例の計30例を対象として用いた。末梢血約7mlよりDNAを抽出し、EIF2AK3遺伝子変異を同定するためにexon intron junctionを含む全17のexonをPCR法にて増幅し,その産物の塩基配列をDNAシークエンサーにて確認した。 その結果、糖尿病群では、exon1(14-20(L)7/8)、exon2(135Ser/Cys)、exon3(165Arg/G1n)、exon5(A de1)、intron10(811A/T)、exon11(596G1n/G1n)、exon13(703Ser/A1a)の計7ヶ所に多型が認められた。正常群でもexon2、exon3、exon11、exon13の計4ヶ所の多型が存在した。糖尿病群でのアリル頻度はexon1(0.80/0.20)exon2(0.69/0.31)exon3(0.67/0.33)exon5(0.98/0.02)intron10(0.78/0.22)exon11(0.41/0.59)exon13(0.67/0.33)であった。Exon5以外の多型についてはヨーロッパ人の正常群と比較してアリル頻度に明らかな差は認められなかった。 今回新たに認められたexon5の変異は現在まで報告がない。この症例は15歳発症で母、母方叔母と祖母の3世代に糖尿病を有する家系であるが、ミトコンドリアDNA3243変異は認められなかった。現在この遺伝子変異と糖尿病発症との関係を検討中である。
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