研究概要 |
我々は、日本人糖尿病発症におけるEIF2AK3遺伝子の関与を検討するために、環境因子より、強い遺伝因子により発症したと思われる若年発症の糖尿病症例の収集を行った。 その基準として、1)20歳以下で発症した2型糖尿病であること、そのために自己抗体が陰性で且つ、インスリン分泌能が保たれていることが証明されていること2)MODY遺伝子異常、ミトコンドリアDNA異常、染色体異常による糖尿病が否定されること、の1)2)の条件下のもとに各症例の臨床的情報とDNA採取(約50μg)を行った。その結果、男性23名(発症年齢11-17歳、平均17.1歳)、女性17名(発症年齢10-20歳、平均14.8歳)の計40名であった。家族内に糖尿病患者が存在する者が35例、臨床的にMODYの範疇の者が9症例認められた。40症例中、MaxBMIが25未満で糖尿病が発症した者が13症例認められた。糖尿病の治療としてインスリンが用いられている例が23症例存在し、糖尿病罹病歴4年以上の24例中、20症例にインスリン療法もしくはその適応が認められた。MODY3遺伝子異常を調べるため、HNF1α遺伝子の全エクソンとエクソンイントロンジャンクションの遺伝子変異を検討したが、明らかなHNF1α遺伝子異常による糖尿病は認められなかった。対象の40名に対し、EIF2AK3遺伝子に存在する17エクソンすべてにおいて、遺伝子のスクリーニングを行なった。その結果、エクソン1に112-132(CTG)7/8、アリル頻度0.76/0.24、エクソン2に1114C/G、アリル頻度0.72/0.28、エクソン3に978G/A、アリル頻度0.67/0.33、イントロン10に811A/T、アリル頻度0.72/0.28、エクソン11に707G/A、アリル頻度0.50/0.50、エクソン13に1638T/G、アリル頻度0.31/0.69であった。これらの遺伝子多型はDelepineらが報告した(Nature Genetics,25,406-409,2000)多型と同じものであり、そのアリル頻度とともフランス人のコントロールと比較して明らかな差は認められず、また新規の遺伝子変異を発見することもできなかった。よってこの遺伝子の日本人における若年発症糖尿病に対する関与は低いと考えられた。
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