研究概要 |
アポトーシス抑制遺伝子であるBcl-2による虚血性肝障害抑制機構を明らかとし、日常臨床で使われているグルココルチコイドを用いBcl-2を誘導にすることによって虚血性肝障害を抑制することを目的とした。 1.Bcl-2の局在 我々はすでに肝組織にも十分量のBcl-2が存在すること、また細胞内の局在はこれまで言われていたミトコンドリア外膜ではなく、内膜中心であることを発表している。(Motoyama et al, Biochem Biophysic Res Comm, 1998) 2.虚血に対するミトコンドリアBcl-2の変化 我々は1998年、肝虚血時に肝実質細胞が産生するオキシダントが類洞内皮細胞を選択的にアポトーシスに導くという新しい虚血性障害機構を発見した。今回の研究では、アポトーシス抑制遺伝子であるBcl-2に着目し、肝虚血に対するミトコンドリアBcl-2タンパクの変化を超氷薄切片免疫電顕法を用いて調べた。その結果、虚血により類洞内皮細胞ミトコンドリアBcl-2が有意に減少し、この変化は特異的キサンチンオキシダーゼ阻害剤により有意に抑制されることが判明した。これに対し肝細胞ミトコンドリアBcl-2に変化は認められなかった。虚血肝における類洞内皮細胞アポトーシスにBcl-2が関与していることが確認された。(論文投稿中) 3.メチルプレドニゾロンによる虚血性肝障害抑制機序 摘出ラット肝灌流モデルにおいてメチルプレドニゾロンの虚血性肝障害抑制効果を検討した。その結果、メチルプレドニゾロンの前投与は肝虚血による過酸化水素産生を抑制することなく、ミトコンドリア膜電位低下を抑制することによって虚血性肝障害を抑制することを発見した。(論文投稿中)
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