研究概要 |
四肢末梢循環不全について,細動脈レベル以下の毛細血管相の微小循環を可視化するため放射光血管撮影を用いる研究を計画した。下肢虚血モデルをラットで作成し,これにカテーテルを挿入し放射光血管撮影ができ,血管径100μ前後までの血管床を可視化できることがわかった。 ただ側副血行路の新生状態・薬剤反応性なとを観察するためには、更なる画像の明瞭化のための工夫を要することも判明した。末梢循環の増悪因子として重要視されている喫煙の影響を解明できるように,ラットで喫煙状態にするシステムを確立し,血管攣縮が起こることを確認した。冷却でも,血管攣縮が引き起こされることを確認できた。肺循環でphosphodiesterase 4 inhibitorが血管拡張を促すことも確認でき,これを用いて放射光血管撮影で末梢循環不全の改善が得られるかどうかを確認する予定でいる。手指動脈レイノー現象の臨床での可視化に先立ち,冠動脈バイパス術で得られた橈骨動脈の一部を材料として、血管攣縮のパターンとその増幅因子・弛緩因子についてin vitroの研究を行いPD III inhibitorの作用と効果を検証できた。これを用いて臨床例でのレイノー現象可視化の研究の際に,この薬剤を使用して画像を得る方針を決定することが出来た。ラット灌流心を用いて,冠循環にカリウムチャンネルの拮抗薬を加えて冠動脈攣縮を放射光血管撮影で観察できるモデルを完成させた。この画像解析にデンシトメトリー法を応用して画像の定量化を目指し,最近実測値を得られるようになった。 多岐に渡る研究ではあるが,臨床例での研究に先立ち,さらなる末梢循環不全に影響する因子に関する基礎実験を重ねる必要があるのと,更に明瞭な画像を得るために放射光血管撮影システムそのものの改良も今後の課題である。
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