本研究期間中に以下の点を検討し、報告した。 1)純粋なヒト型モノクローナル抗体であるSK1はDukes B大腸癌患者の所属リンパ節から作成した。抗体には大腸癌の運動能を抑制する作用がある。定量的RT-PCRによる認識抗原(AgSK1)のmRNA量を検討すると、各種の大腸癌細胞株においては全てにその発現を認めたのに対し、非上皮性腫瘍細胞株、正常人のリンパ球、非担癌患者の正常大腸粘膜にはそのmRNAの発現量は全く認めないか、極めて少ないことが判明した。免疫染色による抗原分布と一致した。AgSK1は大腸癌に比較的特異性が高く、またその接着ないし、増殖に関与する分子であることが遺伝子レベルでも示唆された。 2)AgSK1の遺伝子全長をPCRでクローニングし、AgSK1の発現をみとめない線維芽細胞にAgSK1を強制発現させた遺伝子導入細胞株の作成を続けている。今後、この遺伝子導入細胞株を用いて接着、増殖能にSK1抗体が抑制的に働くかどうかを検討しAgSK1の機能解析を行う予定である。 3)新たに作成した2種類のヒト型モノクローナル抗体(KK1-KK2)について検討している。KK1はヒト型IgA抗体でvimentinに類似した32KDaのタンパクを認識する。リンパ球のsourceは肺の非小細胞癌患者の所属リンパ節から得た。抗原の分布は大腸癌、肺非小細胞癌、に明らかに存在するが、正常肺、正常大腸粘膜をはじめ、小腸、肝臓、皮膚、腎臓、横紋筋には免疫染色上は抗原を確認できない。KK1はヌードマウス移植ヒト大腸癌細胞株、HT29の発育をポリクローナルIgAに比して有意に抑制した。KK2はヒトIgG1型モノクローナル抗体で、乳がん患者のリンパ節から作成した。大腸癌、肺癌にも強く反応するが、調べえた正常組織との反応性は確認できない。認識抗原は糖鎖である可能性がある。やはりヌードマウス移植大腸癌細胞株colo205の発育を強力に抑制した。
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