ラット冷疎血-肝移植モデルを用いて、肝冷疎血-再潅流障害における肝細胞と類洞内皮細胞(SEC)のアポトーシスの関与およびグラフトの回復の過程について経時的に検討した。(方法)雄性Lewisラットに同所性肝移植を行い、冷保存無し(UW1h)、冷保存あり(UW16h)の2群を設定し、各群につき冷保存直後、再潅流後4時間、24時間、3日、7日で以下の項目について検討した。(1)TUNEL法、活性型Caspase-3免疫染色(2)ラットSECに対するモノクローナル抗体SE-1の免疫染色(3)Ki-67免疫染色(結果)(1)TUNEL法ではUW16h群において再潅流後4時間をpeakとしてSECのアポトーシスを認めた。同時期での肝細胞のアポトーシスは少なかった。活性型Caspase-3免疫染色では、UW16h群において再潅流後4時間でSECに活性型Caspase-3の染色を認めたが、肝細胞でのCaspase-3の活性化は認めず、Caspase-3陽性のSEC数は同時点でのTUNEL陽性SEC数と比較して少なかった。また、アポトーシス細胞は肝小葉全体に平均的に存在していた。(2)SE-1の染色性はUW16h群で再潅流後4時間、24時間で染色性の低下を認め、3日、7日で回復した。(3)Ki-67陽性細胞は肝細胞、SECともに再潅流後3日で増加、7日で正常化した。(考察)ラット肝冷保存-再潅流障害では、再潅流後早期にSECのアポトーシスが起こっているが肝細胞のアポトーシスは少ない。アポトーシスの完成前に一過性にCaspase-3の活性化が起こると考えられた。グラフトの再生は再潅流後3日をピークに起こり、7日で終了していた。SE-1の発現は肝冷疎血-再潅流障害におけるSECの障害を反映しており、従来まで困難であった類洞内細胞の鑑別に有用であると考えられた。
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